抄録
本稿は,君主制国家に特有の政府・企業関係がファミリービジネスの事業承継に与える影響を明らかにすることを目的とする。分析対象はアラブ首長国連邦(UAE)の大手ファミリービジネスであり,制度的枠組みと首長家との関係様式を整理した上で,具体的事例を検討した。本稿が提示する仮説は,政府との結びつきが緊密な企業ほど承継を円滑に進める一方,関係が希薄な企業では承継に困難が生じやすいという命題である。分析の結果,この仮説はおおむね支持され,政府・企業関係のあり方が承継の成否にとって決定的な要素であることが確認された。以上の知見は,君主制国家におけるファミリービジネス研究の深化に資するものである。