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海風の畑から生まれる革新。ボルゲリの名門「オルネッライア」が示す、ラグジュアリーの現在形

Дата публикации: 30-09-2026 11:00:00

「スーパータスカン」と呼ばれる数々の銘酒を生み出したイタリア・トスカーナ地方のボルゲリに位置するワイナリー、オルネッライア。ティレニア海を望む畑からセラーまでを、テクニカル・ディレクターのマルコ・バルシメッリが見せてくれた。気候変動の時代に名門が何を変え、何を守ろうとしているのかを追った。

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ティレニア海を望むベラリアの畑へ

ベラリアの畑

Hiromi Tani

ベラリア(Bellaria)は“美しい空気”の意。ティレニア海を望む、オルネッライアの主要区画のひとつ。

ベラリアの畑に立つと、眼下にティレニア海が広がる。ブドウ畑は海へ向かって緩やかに下り、オリーブや糸杉、その向こうに青い海が続く。ボルゲリでもひときわ美しい景観だ。驚くのは、その乾いた空気。ボルゲリの平地はかつて長く湿地だった土地で、海も近い。高湿な場所を想像していたが、ここでは海から絶えず風が吹き、陽射しは強いのに空気はからりとしている。

ベラリアは、オルネッライアが所有する主要区画のひとつ。所有する畑は、赤ワイン用品種119ヘクタール、白ワイン用品種15ヘクタール。ベラリア、フェルッジーニ、ボッツェ、そしてワイナリー周辺のオルネッライアなど、複数のエリアに分かれている。

「この畑は一年を通して、海から風が入ってきます」とマルコ・バルシメッリ。夏の暑い日にも海風が気温の上昇を抑え、海面からの反射光によって十分な日射が得られる。背後の丘は内陸からの熱気を遮り、周囲の森も涼しさをもたらす。最も高い地点でも標高約130メートル。それでも鮮度を保てるのは、海、風、地形がつくる微気候によるところが大きい。ベラリア上部は石が多く、石灰岩を20〜25%以上、粘土も20%以上含む深い土壌。年間降水量は700ミリメートルを超える一方、生育期には300ミリメートルを下回る。冬に蓄えた水分をブドウの根が深く追うため、灌漑を必要としない土地である。

畑からセラーまで案内してくれたマルコは、トスカーナ生まれ。ボルドーのシャトー・グリュオ・ラローズで経験を積み、2010年からはエリック・ボワスノのもとで複数のシャトーのコンサルティングに携わった。2024年にトスカーナへ戻り、オルネッライアとマッセートの生産責任者に就任した。

密植区画で取り入れている枝を短く残す仕立て

Hiromi Tani

密植区画で取り入れている、枝を短く残す仕立て。新梢を左右に分散させることで、葉や房が重なるのを防ぎ、光と風が入りやすい樹冠(枝葉の広がり)をつくる。

こうした条件に合わせ、栽培方法も変えている。興味深いのが植栽密度だ。2000年前後には1ヘクタール当たり8,000本以上、一部では12,000本という高密植を採用していたが、現在、新植の目安は6,000本前後。実際、12,000本植えられていたメルローの区画では、1列おきに樹を抜いて密度を半減した。植栽密度だけでなく、仕立てや剪定も区画に応じて見直している。「以前は、より高い密度、より高い凝縮感を求めていた。でも、いまはアルコールも凝縮感も過剰になり得る。必要なのは、よりよいバランス」

専用カート

Hiromi Tani

剪定や新梢整理など、精度を要する作業の多くを担う女性スタッフ。畑では座ったまま作業できる専用カートを使い、日除けも備える。作業の精度だけでなく、働く環境にも配慮する。

「固定されたレシピはない」。セラーで続く細かな判断

オルネッライアのワイナリー

Hiromi Tani

1987年に建てられたオルネッライアのワイナリー。2018年にはグイッチャルディーニ&マーニ建築事務所による改修が行われた。

セラーでも考え方は同じ。「固定された醸造のレシピはない」とマルコは言う。ブドウは手摘みされ、冷却後、房での手選果、除梗、光学選別を経て発酵槽へ入る。発酵中はチームで毎日各タンクを試飲し、ポンピングオーバー(タンクの底から果汁を抜き、上からかけ流して循環させる作業)の回数、温度、抽出の強さを区画ごとに決める。同じ品種でも、ヴィンテージや果実の状態が違えば方法も変える。

分析施設も備えるが、数字はあくまで判断材料。発酵が終わったか、異常がないかは分析できても、ワインの質そのものは数字では決められない。収穫、抽出、熟成、ブレンド。最後は人間の味覚と経験に委ねられる。

オルネッライアのワイン造りの様子

Hiromi Tani

写真左/澱引きでは窒素ガスを使ってワインを移送し、酸素との接触を極力抑える。 写真右/白ワインの熟成にはアンフォラなど複数の容器も使い分ける。

それが如実に表れるのがブレンドだ。区画ごとに仕込んだ約80種類のワインに、選別したプレスワインも加え、試飲を重ねて最終的な構成を決める。多様な区画を細かく分けて醸造し、最後にひとつのワインへまとめる。オルネッライアの精度は、この積み重ねから生まれる。

オルネッライアのセラー

Hiromi Tani

樽はフランスの12のメーカーから選び、木目や木材の産地、乾燥期間、トーストの違いを毎月試飲して確認する。翌年のヴィンテージがまだ見えない段階で発注するため、「経験だけでなく、少しの直感も必要」とマルコ。

最新ヴィンテージを試飲

オルネッライアの最新ヴィンテージのボトル

Hiromi Tani

左から「レ・セッレ・ヌオーヴェ・デル・オルネッライア2024」「オルネッライア2023」「ポッジョ・アッレ・ガッツェ2024」「オルネッライア・ビアンコ2023」。

ポッジョ・アッレ・ガッツェ・デル・オルネッライア2024のテイスティング

Hiromi Tani

「ポッジョ・アッレ・ガッツェ・デル・オルネッライア2024」はソーヴィニヨン・ブランの鮮やかな香りにヴェルメンティーノの厚みが重なり、フレッシュで開放的。

「オルネッライア・ビアンコ2023」は、より希少な存在だ。2013年に始まった白のトップキュヴェで、毎年の生産量はわずか数千本。ベラリアの高い位置にある、石や岩が多く石灰岩に富む区画のソーヴィニヨン・ブランが主体で、時間をかけて開いてくるタイプ。黄果実やセージ、ミネラルのニュアンスに、厚みのある口当たりと緊張感、塩味が重なる。「香りは控えめだが、時間とともに複雑さが現れてくる」、マルコはそう表現した。

赤はまず、「レ・セッレ・ヌオーヴェ・デル・オルネッライア2024」。雨と暑さが交互に訪れた難しい年で、凝縮感よりもフレッシュさや飲みやすさ、バランスのよさが先行する。

オルネッライア2023を注ぐ様子

Hiromi Tani

「オルネッライア2023」。このヴィンテージに与えられた言葉は「La Vitalità(生命力)」。オルネッライアが主宰するワインと芸術を融合させたチャリティプロジェクト「ヴェンデンミア・ダルティスタ」では、パフォーマンスアーティストとして活躍するマリーナ・アブラモヴィッチがそのテーマを作品と特別ラベルで表現した。

そして「オルネッライア2023」。春は雨が多かったものの、その後は天候が安定し、9月には乾燥した理想的な収穫条件が整った。区画ごとに成熟度を見極めながら収穫日を選べた年で、マルコは「私にとって2023は、オルネッライアのベンチマーク」と評する。果実の豊かさと密度がありながら、口当たりは柔らかく、フレッシュな酸と塩味が全体を引き締める。力強さはあるが重さに傾かず、各要素が過不足なく収まっている。若いうちから楽しめる一方、10年、20年、その先までの熟成も期待できるという。

自由な発想を700年の時間軸で受け継ぐ

オルネッライアの系譜を描いたフォトブック

Hiromi Tani

オルネッライアの系譜を描いたフォトブック。19世紀前半に、トスカーナ大公による国家規模の大干拓によって、沼地から肥沃な畑へと生まれ変わった。

スーパータスカンは、既存の制度に収まることより品質を優先する自由な精神から生まれた。オルネッライアもまた、その時代の空気から誕生したワインだ。40年余りを経たいま、高密植というかつての常識を見直し、気候に合わせて植栽や樹形を変える。分析技術を使いながら、最終的な判断は人に委ねる。革新とは、新しい技術を取り入れることだけではなく、必要なら成功してきた方法そのものを見直すことでもある。

現在オルネッライアを所有するのは、12世紀から続くフィレンツェの侯爵家、フレスコバルディ家。銀行業や織物業を経て、ここ数世紀は農業を生業としてきた一族で、2002年からオルネッライアへの参画を始めた。マルコは、フレスコバルディ家にとってワインは短期的に価値を上げて売却する資産ではなく、次世代へ渡すものだと説明する。「自分たちが知っているのはワイン造りであり、子どもたちもこれを続けていく」。一族の経営だからこそ、数年先ではなく世代単位でビジョンを考えられるという。

「ヴェンデンミア・ダルティスタ」の歴代作品

Hiromi Tani

「ヴェンデンミア・ダルティスタ」の歴代作品。手前は2013年「L’Eleganza」をテーマに彫刻家の曽根裕が手がけたボトル。

そして、その時間軸は文化にも及ぶ。フレスコバルディ家は、700年以上にわたりフィレンツェの歴史とともに歩んできた名門貴族。農業やワイン造りだけでなく、かつては銀行家として活動し、芸術家への作品依頼や教会建設などを通じて文化を支えてきた。オルネッライアの「ヴェンデンミア・ダルティスタ」も、各ヴィンテージの個性を現代アートで表現するという新しい形ではあるが、そうしたパトロネージュの伝統と無縁ではない。

フィレンツェの名門フレスコバルディ家の絵画

Hiromi Tani

フィレンツェの名門フレスコバルディ家。現当主はランベルト・フレスコバルディ。

制度の外側から生まれた革新を、12世紀から続く貴族の家系が受け継ぐ。一見、対照的な組み合わせにも見える。だが、長い歴史を守ることは、伝統に縛られることではない。新しい方法を試し、必要なものを変えてきたからこそ、一族の歴史も続いてきた。変わり続けながら、世代を超えて土地やワインを受け継ぐ。その時間的な余裕こそ、オルネッライアのラグジュアリーを支えているのではないだろうか。

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Классификация: Пресс-релизы. Схожих патентов: 0. Схожих новостей: 9. Тональность: 0. Информативность: 10. Источник: www.esquire.com.